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魔王

シューベルトの歌曲「魔王」は、1815年の11月16日に作曲。
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若干18才の作品。

4時間程度で作曲されたという逸話も残る。
ゲーテという人は、単にシューベルトが嫌いなだけだったのでは?と思いたくもなる。
「魔王」はツェルターの付曲の方が良いと言い、「野ばら」にもダメ出し。
大文豪といえど、音楽が分かる訳ではないのは歴史が証明か。

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シューベルトの歌曲をライフワークとし、生涯に数え切れない数の録音を残したヘルマン・プライによる、いわばスピンオフ的作品。

1977年と1978年に分けて録音。
指揮は、のちに日本でマーラーブレイクする前のガリー・ベルティーニ。
画期的な録音であると同時に、当時はややキワモノ的扱いをされたよう。
その証拠に、そのほとんどが初録音だった事と、その後も2000年に入ってアバドが取り上げるまで、後に続くものがいなかった。
ピアノの伴奏で、しっかりとリートとしての完成度の高さを誇るものをわざわざアレンジするなんて、という邪道感があったのか。
確かに少し無理があるというか、今一つピンと来ないものもある事にはあるけど、何しろアレンジャーの名前だけ見ても、リスト、ベルリオーズ、ブラームス、オッフェンバック、レーガー、ブリテン、ウェーベルンに、あの伝説のワインガルトナーと、錚々たる顔ぶれ。
「魔王」については、リストとベルリオーズの聴き比べが出来るのは、調違いもあってなかなかに興味深い。しかも極上の歌声で。

ヘルマン・プライは、その人生の終わり近くの1995年に岩城宏之さん指揮のアン金との共演で、同様の企画の録音を残している。
声はさすがに衰えが隠せないものの、長年歌ってきた年輪を感じさせる味わいの深いもの。
つくづく1997年のサントリーでのリサイタルに行けなかった事が、いつまでも悔やまれている。

by romikorokumikuri | 2020-11-16 18:59 | 音楽